高齢者の孤立化

ネパールの高齢者は、これまで子どもたち、孫たちに囲まれて生活する拡大家族が中心でした。しかし近年、ネパール人の若い世代では、ネパールの都市部や国外へ出稼ぎに出て家計を支えるという就労形態を選択する人々が増えました。特に2015年4月25日、マグニチュード7.8のネパール地震で9000人近くの死者、国民の5人に1人となる560万人の被災者が出たネパール国内の動きで、ネパール国外に仕事を求め出国する人々が増えました。ネパール経済の発展、人々の暮らしが物資的に豊かになるためには大切な動きではありますが、家族関係に大きな影響を与えています。

お年寄りが村に取り残され、農村部の高齢化、過疎化が進み、大きな問題となっています。肉体的にきつい農業や放畜業、水汲みやまき集めを女性が中心として担っていますが、近年では女性の村離れも目立つようになってきました。若い人々が都市や他国で身に着けた知識や技術をネパールで発展していく国づくりの基盤は弱く、外国生活が長期化し、そのまま市民権を得てネパールに戻らない人々も増えつつあります。これからネパールがどうなっていくのか、高齢者はどうなっていくのか村の人々の大きな関心ごとになっています。

エルダリープログラムの実現

私たちは日本に住むネパール人が孤立しない社会を実現したいという願いと共に、ネパールに住む人々に対しても同じ願いと目標をもっています。そこで、お年寄りが集いあい、共感しあい、余生に意味を見出してイキイキとした生活を送ることの実現を目的としたエルダリープログラムを開始しました。

孤立化した高齢者
女性高齢者

これまで家族のために頑張ってきたお年寄りが村で孤立してしまい、淋しさと共に重労働を担っています。エルダリープログラムは、ヒンドゥー教の教えから、人生を学生期(がくしょうき)・家住期(かじゅうき)・林住期(りんじゅうき)・遊行期(ゆぎょうき)の4つにわけて幼き頃の自分自身に語りかけ、若かった頃を思い出し、そして今、老いた自分の役割、尊厳、愛情、家族への想いを吐露し合い、安心感を得ながら尊厳を維持する支援です。

四住期は理想的な生き方として有名です。その考え方はインドに留まらず、日本を始めとした世界中の人に影響を与えていると言えます。

このように年長者や男性が家事をする姿をかつてのネパールで目にすることは、ほとんどありませんでした。しかし、現代ネパールでは男性やお年寄りも、生きるために様々な労働に適応し、新たな時代を生きようとしています。その思いを支えたい、お年寄りが生きがいを見つけ、生きる意味を失わないようにしてほしいという願いを込めて、プログラムが開催されています。

時に、昔を懐かしみ、家族を思慕し涙が流れることもありますが、力強く、ネパール社会を生きる高齢者の皆さんへの支援をUSHA JAPANはサステナブルに支えていきたいと願っています。

このプログラムは、我々NGOの支援を受けて、村人が主体になって継続しています。

その、プログラムの提案者でありリーダーシップをとるのは地元マチャプチャレ行政村のヘルスワーカーであるジャナックさんです。彼のひたむきな思いや情熱には、いつも心を打たれます。私たちが励まされ強められていることを強く感じます。彼は我々NGOの1スタッフとして、日々活躍しています。ネパールを愛し、日本を愛し、その双方の発展に向けて汗をかく現地のリーダーです。

互いに勇気づけられながら、昨日よりは今日、今日よりは明日と、日々、改善、変化、発展し続ける

JICAネパール事務所現地職員(左)会長(中央)現地リーダー(右)