安全な水入手のためのプログラムの設計

私たちの歩みは、ネパール山岳・山間地であるマチャプチャレ行政村ワード6(デタール村)からはじまりました。

ネパールの過酷な労働環境

以前の村での暮らしは大変過酷で、下痢症で慢性的な低栄養状態などにより命を落とす乳幼児やお年寄り、ひどく痩せた女性が多く暮らしていました。国際支援が入ることで村が活性化し、現在では日々発展しています。国際支援を受けることをきっかけに、村全体が自力で豊かになる力とサステナブルに発展していける力を手に入れることができたからです。
今も変わらず水道、電気、ガスははありませんが、当時の水不足と水の汚染が起因する健康課題は大変減りました。水は大変貴重で、飲料水や生活用水は家庭にあるありったけのバケツや鍋で水をためて大切に使います。

困難や負担を厭わない忍耐があるから、今がある

水汲みの様子

ヒマラヤの湧き水をためているホールで水くみをしている女性たちです。今もこの姿を村に行けば毎日目にします。

水場までの距離は様々ですが、JICAの調査では1日平均4-5回の水くみを平均往復時間40分という重労働を女性や女の子が担っていました。

文化や社会的慣習そして宗教から、ネパールの女の子は、自分自身を大切にすること、自分のために時間を使うこと、夢を叶えるための努力、自分のために頑張りたいという小さな願いさえ失ってしまうほど、日々の当たり前を担っています。
自己実現へのチャンスを奪われながら、ひたむきに生きています。
子どもたちや女性がつらい水汲みをしなくてすむように、私たちは、砂濾過器を設置する活動をしました。
砂濾過器があれば、汚い水を飲んで病気になることや遠くまで水を汲みに行くことの負担を減らせるからです。山岳や農村地域に住む女の子たちは学校に行く時間、遊ぶ時間を削り、足場の悪い山道を数往復して水くみをします。
水を手に入れることは、人間のいのち、健康、暮らしには必要不可です

干しあがった貯水場の写真

村のあらゆるところに、干上がった貯水場を目にします。

多くの村や山岳、農村地域では、水の公共的な供給設備である水道を使える人は限られています。また、水道は山の湧き水を利用しているため、使用できたとしても供給が一定ではありません。特に乾季になると水汲み場が完全に干上がる事も珍しくありません。各家庭の近くで水が手に入れば、女の子や女性は家から離れた水汲み場までの往復や洗濯をしなくてもよくなります。そしてその水が清潔で安全であれば、水の汚染を原因とする病気から人々を守ることもできます。

台所の写真

今も村の人々の暮らしは変わっていません。薪を集め、火を起こすところから女性の台所仕事が始まります。

特に雨季の暮らしが大変で、コケの生えた滑りやすい悪路を、妊婦さんや幼い女の子が水や薪を背負い手ぶらの私たちを笑顔で追い越していきます。

動かない車を押す様子
男性の家事仕事の様子

ネパールでは、長い間水不足と汚染された水による健康被害に対して様々な対策を行ってきましたが、今もその被害は続いています。ネパールで暮らす人々は、井戸を掘る、ろ過器を使う、貯水タンクを作る、雨水を汲む、屋上に水のタンクを備えるなど様々な工夫で水を確保しています。水不足は村や山岳、農村地域だけでなく都市部の問題でもあります。

水を入手する様子

現地で調達できるガンジス川でとれる石、砂利、砂で作ったろ過機を設置することになりました。村のすべての小学校の校庭に設置され、さらに水汲みの環境が厳しい地域へ設置されました。しかし、バケツの盗難、蛇口を隠してしまう(自分の家庭の水汲みの時に水がなくなるため)など様々な問題が出てきました。ろ過機が遠い村人からの非難の声も聞こえてきました。

ろ過している様子

こうなれば家庭用にペットボトルを使ったろ過機を作ろうと、マザーズグループ中心に研修会が立ち上がり、村へ普及活動が始まりました。上記はその写真です。

しかし、神聖な台所に廃棄物であるペットボトルをつるすタイプの家庭用ろ過機は夫や祖父からの反対に会い、普及は断念されました。

ろ過機設置場所

数々の困難を乗り越えて、村に9か所のろ過機を設置できました。

ポスター1
ポスター2
ポスター3

私たちのポスターです。

健康教育においても、ろ過機から入手した水を煮沸消毒することで乳児のミルクにも安全に使えるということを伝えることができました。字が読めない恥ずかしさや、理解できないことのつらさを感じない、誰にでも理解できる教育の方法を村人と共に考えていくことは私たちの喜びでもあります。

ろ過機使用の様子

日本の技術を他国が普及することもできます。タイの専門家や支援家が、ろ過機の普及活動のためにマチャプチャレ行政村に入るようになり、より一層、安全な水を手に入れられる人が増えました。

分かり合えない時も、壊れてしまわないで、回復と改善に向けて踏み出していく

子供たち

子どもたちは自分自身で活動することが大好きです。支援国であり支援されて当たり前ではなく、自らの手で自分や家族そして村をよくする力、ケアする力を培っていくことができます。カーストや、男女、様々な村の事情など関係なく、個人が大切にされ尊重されるときに子どもたちは輝くことができます。子どもたちはネパールが支援国であり支援されて当たり前と考えるのではなく、自らの手で自分や家族そして村をよくする力、ケアする力を培っていかなければなりません。

人々は認め合うことが必要です。小さな提案が採用されないときに大きな怒りや反対勢力になりうること、いじめや村の問題にまで発展してしまうことがあります。私たちは現地活動を通してたくさん学び、反省し、うまくいかないときには勇気をもって謝罪すること、新たな代替案を提案することの大切さを実感しました。このようにして、小さな日々の積み重ねが信頼に代わっていくのです。

簡易砂ろ過装置

私たちの活動は、このように小さな村で、安全な水を供給する活動から始まりました。